飽和

 

 
 
 
 
バラムにけだるい雨が降り始めたのは午後三時だった。
 
朝からずっと曇り空だったが、ここにきてようやくたまった分が降ってきている。梅雨が、始まる。今日の午後の天気予報は降水確率90%だった。
 
スコールは一人で買い物に出ているところだった。ガーデンに帰ろうと思ったところで雨に気づいた。ショウウィンドウの向こうはざあざあ降りだ。傘はもっていない。
 
店主が気をつかって傘を貸そうとしてくれたが、断った。いつ返せるか分かりませんから、そう言って雨が降る中、ガーデンへ歩いていく。
 
ガーデンまでそう遠くはない。だけどすぐそば、近くともいえない。ずぶ濡れは承知の上だ。今日買ったのはアイテム数品と、シャンプーや石鹸だけだった(これはリノアに言いつけられた)。さほど濡れて困るものではない。ガンブレードも丁寧に管理している。
 
それでもやはり雨ははげしく、途中で目を開けているのが少し難しくなってきた。
 
・・・・・・・・実はこうなることをひそかに期待していた。雨が降ること。そしてその中を傘を差さずに帰ること。
 
まわりに人がいないことを確認して、帰り道半ばでスコールは立ち止まった。服が濡れてきて体に張り付く。髪の毛の奥のほうまで水が染み込んでくる。指先が冷たくなってくる。心地よかった。他人には言ったことがないが、スコールは雨が好きだった。とくに午後から突然降るはげしい雨が。理由はうまく説明できないが、雨が降るときの音、白くなる景色、濡れたにおいがなぜかいつも気分を高揚させた。普段ないことが、好きなのかもしれない。
 
顔を上げた。空を見ようとする。今、上はどうなっているんだろう。そう思ってなるべく目を開けていようと思ったが、かなわなかった。そういえばずっと昔、まだ小さいころにそうしたことがあった。見てみたい。本当に今、上はどうなっているのか。気になってもどかしいが、それすら楽しい。
 
しばらくそのまま、目をつむっていた。
 
セ氏約19度、湿度が飽和をおこした世界。
 
雨が降って、自分を含めたさまざまなものに降り注ぐのを感じていた。地面が濡れて土が濃くにおった。顔の起伏を水がつたっていった。冷たい感触の中、自分の高めの体温の輪郭がくっきりと浮かび上がっているのを感じていた。
 
ガーデンに戻るころにはすっかり濡れていて、服がずっしりと重い。目線をもっていったところ、入り口にはリノアがタオルをもって待っていた。帰りが遅いから心配になったんだろう。こちらを見た後、びっくりした顔で駆け寄ってきた。
 
「ずぶ濡れじゃない」
 
「雨が降ってるからな」
 
「傘は」
 
「ない」
 
「借りるなり、買うなりすればよかったじゃん」
 
「面倒だ」
 
リノアが呆れ顔になる。信じられない、顔が語っていた。
 
「ずぶ濡れよりかマシでしょ。あー、タオル一枚じゃたりないや」
 
なんとなくそうしたくなって、スコールはタオルで頭をごしごしこ拭いているリノアに言った。
 
「雨、好きなんだ」
 
リノアが目をぱちぱちさせる。理解不能。まるで珍しいものを見るみたいに。
 
「変か?」
 
「うん、ちょっと変」
 
するとリノアはぎゅっと笑った。
 
「でも、いいね」
 
笑った顔を見た。その歯が、白かった。
 
 
 
 
―END-
 
 
 
ノリで書いたFF8第一作。超短い。私が思うスコールってこんな感じ。周りから見て「?」な感じの行動を時々とる、みたいな。予想外にポップに仕上がった。6月に入り、地元でも雨が降りましたのでうpします。
FF8には個人的にたくさんの思い入れがあるんで、ペースは遅いながらも、ちょっと考えてかんがえてつくるつもりです。これからもよろしくお願いします。
 
 
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